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【沖縄と北海道が生んだ奇跡の一滴】『ミュール・ド・ソレイユ』希少果実のフルーツワインとは?
今年の生産数は500本あまり。
ボジョレー・ヌーヴォーの生産本数が約2000万本以上と考えるといかに希少な一本であるか、お分かりいただけるかと思います。
これまでは、使用されている果実の産地である沖縄県浦添市(うらそえし)と北海道厚真町(あつまちょう)のみで販売されていた桑の実とハスカップをブレンドした希少なフルーツワイン『ミュール・ドゥ・ソレイユ』
この希少なワインを沖縄シークヮーサー本舗が初めてインターネット上で販売いたします。
どんな味わいのワインなのか?
「口当たりはフレッシュな果実味や酸味を感じさせつつ、後から来る濃厚な凝縮感と程よい野性味が印象的でした。面白いワインが出来たなと感じました。」
これまで前例のなかった組み合わせのワイン『ミュール・ドゥ・ソレイユ』を作った際、馬追(まおい)蒸溜所の池岡さんが感じた第一印象だったそうです。
前者の味は北海道の冷涼な気候で育ったハスカップ由来。
後者の味は沖縄の太陽をしっかりと浴びて育った桑の実由来の味わいです。
「ワインをグラスに注ぎ、口元に近づけると野性味ある力強い香りと、ベリーを感じさせる香りに気付きます。
口に含むとハスカップのフレッシュな酸味を、桑の実のスパイシーさと懐かしさを感じる甘みが下支えすることで、絶妙なバランスの上に味わい豊かなワインに仕上がりました。」
馬追蒸溜所・醸造責任者の村井さんはこう表現してくれました。
私も一口飲んでみると「なるほど…!」と思わず唸ってしまいます。
見た目こそブドウを使ったワインのようですが、まったく違う味に驚きました。
日々の生活の中で見かけることの少ない桑の実とハスカップはどのような果実なのでしょうか?
少し詳しくご説明します。
桑の実、またはマルベリー
桑の実というと、幼いころの想い出に学校の帰り道に自生している桑の木から実を採って、オヤツ代わりにしていた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
黒く熟れた果実はブルーベリーよりも酸味が弱く、際立つ甘みが特徴です。
英語ではマルベリー(mulberry)と呼ばれ、近年ではビタミンBやミネラル類などの健康を維持するための成分が多量に含まれていることから、欧米では”スーパーフード”として注目されています。
中でも色素のアントシアニンが非常にに多く、収穫の最中にも手が真っ赤になってしまうほどです。
世界中で桑の実は自生、栽培されていますが、沖縄で栽培されている桑の実は『シマグワ』と呼ばれる品種で暑さに強く、ギラギラと照りつける太陽光から栄養成分を蓄える南国特有の品種です。
ハスカップとは?
ハスカップとは、日本においてはほぼ北海道でのみ自生、栽培されており、冷涼な土地で育つ低木の果実です。おそらく、初めて知る果実という方もいらっしゃるかと思います。
見た目はブルーベリーによく似ており、大きさは小指の先ほど。写真で見る印象よりも小さい果実です。
味はブルーベリーよりも酸味が強いのが特徴です。
こちらもアントシアニンが非常に豊富で、ビタミンCも多く含まれているのも特徴です。
”ハスカップ”という名前を初めて聞くと、不思議な響きを感じるのはアイヌ語が由来であるからでしょう。「ハシカプ」(枝の上になるもの)という言葉から来ており、昔からアイヌの人びとには「不老長寿の妙薬」として珍重されてきました。
最北と最南で育った2つの果実はなぜ出会うことができたのか?
ハスカップと桑の実。
離れた場所で育った2つの果実の共通点といえば、ブルーベリーや木苺などのベリーの仲間であること。
なぜ、この2つの果実は出会うことが出来たのでしょうか?
この出会いのストーリーの興味深い点は、失われつつあった過去の技術や産業の中から新しい産業が生まれてきた点です。
さて、ルーツを辿っていくと、当初桑の木はワインを醸造するために植えていたのではなく、「沖縄」以前の「琉球王国」時代に存在していた手織物技術を産業として復興したいという想いがあったそうです。
▲約400年前、ここには琉球王国の最初の居城、浦添城がありました。
かつて、日本中に桑畑が広がっていました。それは絹を生産するための生糸を吐くカイコへのエサ用としての使い道でした。
かつては生糸の輸出量は日本が世界一だった時代もありましたが、化学繊維の発達や輸入の生糸に取って代わられ、和服もライフスタイルの変化から着ることは減り、絹織物の産業は衰退していきました。
当初は織物の技術継承と価値創出に主眼が置かれていたため、カイコが食べる以上の桑の葉が廃棄されていました。
この状況を「もったいない」と感じていた作業者によって桑の葉をお茶にする事業に発展した。
新たな特産品の”桑茶”が生まれるきっかけとなりました。
これをきっかけに絹織物だけでなく、桑全体を新しい産業として立ち上がらせることは出来ないかと試行錯誤が始まりました。
そこで食品加工が専門であった苫小牧高専の教授、岩波 俊介先生へ開発を依頼。ここに2つの果実の出会いが訪れました。
”沖縄県浦添市には、カイコの餌となる桑の木が自生していますが、その「島桑の実」で何かできないかということで、ワインとビネガーを開発することになりました。島桑の実は、イチジクのような味で糖度が20度とかなり高くて甘いんですが、お酒にすると、酸味が足りず、アルコール度数だけが上がって、色がついただけの美味しくないお酒になってしまったんです。いろいろな酵母を試したり、品評会をしたりして試行錯誤が続きました。
同じ頃、北海道の厚真町からも、特産品のハスカップを使ったワインを作りたいと話があり、こちらの開発も進めていました。ハスカップも糖度12度と甘いんですが、クエン酸やリンゴ酸が強いせいで、できあがったお酒は酸っぱく、こちらも頭を抱えていたんです。
そんなとき、ふと海外のパーティーで、ワインを混ぜて飲んだことを思い出しました。試しに2つのワインをブレンドして飲んでみたら「これいけるじゃん!」となりまして(笑)。それから混合比率をいろいろと試して、製品化することができました。”
人と人の繋がり、アイデアを重ねて『ミュール・ドゥ・ソレイユ』は産声を上げることになりました。
現在、この桑にまつわる事業は行政の手を離れ、沖縄美健販売さんの手に渡り、民営となっています。ゆりかごを離れ、大海原へ出たといったところでしょうか。
いかがでしょうか?
筆者は非常に様々な人の手にバトンが渡り、新しい産業としてのチャンスを掴もうと関係者は努力を重ねてきたことが素晴らしいと感じています。
さて、購入に悩む際に気にすべきポイントとして3つ挙げたいと思います。
『ミュール・ドゥ・ソレイユ』の特筆すべき3つのポイント
1.実の収穫の手間暇
使用されている果実はすべて手摘みで行われています。
さて、手摘みであることはどんな良いことがあるのでしょうか?
実はワインの品質を決めるのに大いに関係があるのです。
欧州など大規模なブドウ農園を持っている場合、巨大な農機を使って収穫するそうです。
▲欧州では農園が大規模のため、このようなブドウ収穫用の農業機械を使用しています。
こうした方法で収穫すると、人手がかからず効率的である反面、まだ熟していない実や痛んでしまった実も全て一律に収穫してしまうため、品質は下がってしまいます。
手摘みですと、実を選別しながら収穫するため、品質を向上させることができます。
どちらも一長一短あり、
前者は大量生産とスケジュールを守ることに最適です。
後者は品質を向上させることに最適で、手摘みであれば時間もかかるため価格も高いものになってしまいます。
また、桑の実やハスカップはとても繊細でつぶれやすく、人の手で摘むしか方法がありません。
▲白い実やまだ赤さの足りない実は残して、熟した実だけを収穫します。
収穫や栽培の難しさ、手間暇がかかることもあって、どちらも希少な果実となっています。
2.桑の実とハスカップをブレンドしたワインは唯一
先ほど、桑の実とハスカップの出会いのお話で触れたように、北と南の果実なので本来、出会うことの無かった組み合わせでした。
人類史上、冷凍や冷蔵で果物を遠方に輸送できるようになったのは比較的最近の出来事であり、そうした設備がそろい、物流が発達している国も限られます。
また、桑の実はつぶれやすく、非常に痛みやすい果実ですので、実として市場に出回ることはほとんどありません。一般的にはジャムなどの加工品として出回っています。
ですので、この組み合わせと味わいの発見は、まさに偶然の奇跡が生んだ産物なのです。
3.生産本数が非常に少ない
本稿では繰り返し、桑の実とハスカップが希少であるとご説明してきました。
改めて、収穫量が少ない2つの果実であるため、大量生産が出来ないワインということを強調いたします。
そのほとんどは沖縄県浦添市と北海道厚真町という果実の収穫地でのみ販売されています。
今回、インターネットでの販売も初めての試みで、
「まずは皆さんに存在を知ってもらいたい」
という想いから始めました。
6年前の初生産は100本ほど。
それから少しづつ増産を重ねて、今年は500本あまりまで生産することが出来るようになりました。
それでも、急激に作付面積を増やしたりすることも出来ないこと。
桑の実を育てる沖縄では台風による収穫量の上下もあることなど、すぐに市場で安価で大量に出回るということは残念ながらありません。
▲年ごとにミュール・ドゥ・ソレイユのラベルは違い、浦添市の景勝地八景が描かれています
地道な改良は変わらず続き、希少なワインであり続けるでしょう。
また、改良と果実の生育状況によって毎年味が微妙に違います。
この点は『ボジョレー・ヌーヴォー』と同様に、その年の味を楽しみ、来年の味への期待を持つことができるはずです。
そもそも、なぜ日本でワインを作るのか?
先ほど、欧州のワインの代名詞ともいえる『ボジョレー・ヌーヴォー』の名前を出しました。
実は私が抱いていた失礼な疑問「なぜ、わざわざ日本でワインを作るのか?」と『ミュール・ドゥ・ソレイユ』を醸造をしている馬追蒸溜所さんに投げかけてみました。
ー ワインは多くの日本人のイメージでは漠然と”ヨーロッパのオシャレなお酒”というイメージかと思います。そこでワインを日本国内で作ろうと思い立ち、馬追蒸溜所をどのような理由や想いからだったのでしょうか?
北海道に住む私たちとしては知れば知るほど身近に感じられるようになり、決して敷居の高い世界ではないと感じるようになりました。
日本全体としても、かつては醸造用ぶどうの栽培には不向きとされていましたが、先人の様々な努力の積み重ねにより可能であることが示されました。
こういった背景があって、私たちは制約を感じることなくワイン造りを始めることが出来ました。
ー 日本産ワインはこの先どうなっていくと考えていますか?また、馬追蒸溜所さんは10年後や20年後という長いスパンですと、どのような目標を立ててらっしゃいますでしょうか?
20年後もまだ新参者だと思いますので、100年後ぐらいに究極のワインが完成できるよう次の世代に経験を引き継いでいきたいと思います。
また、欧州には900年の歴史を持つワイナリーがあることを考えると、全体としても日本産ワインはまだ始まったばかりです。
継続する限り「ワインと言えば日本」となるのも夢ではないと思っています。
私の想定を遥かに超えた時間軸で向き合っていらっしゃることと力強い信念に、驚嘆しました。
既に次世代へのバトンとして繋ぐことを前提にしている途方も無さ。
きっと生きている間には欧州との埋めることの出来ない歴史を前にして「まだ足りない」と悔しさを持ち続けるであろう覚悟。
私も応援したい気持ちが湧き上がってきました。
『ミュール・ドゥ・ソレイユ』と共に挑む
微細とも思える味わいを追い求めるために、産業を育てる、という壮大な営み。
たくさんの人がバトンを繋ぎ、今も努力が積み重ねられ続けています。
ただただ、人々を「美味しい!」と唸らせるために。
養蚕業のように、かつては隆盛を誇り、バブルという時代を経てきた経済大国・日本。
国産ワインの分野では海外と渡り合うために、常に挑戦者として模索し続けています。
勝手ながら、その途上を日本の行く末に重ねてしまいます。
悲観も多いこの国の未来を力強く歩みを進めるためにはこうした研鑽の物語が必要です。闘う者がいるのだと。
着実な積み上げを続けていく新しい産業を見守るため。このストーリーを誰かに伝えるために、『ミュール・ドゥ・ソレイユ』を味わってみませんか?
沖縄シークヮーサー本舗 しもじ
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今回は様々な方にご協力いただきました。
沖縄美建販売さま
馬追蒸留所さま
浦添市役所の桑事業元担当者さま
これまで『ミュール・ドゥ・ソレイユ』を取り扱った経験ある店舗さま方
執筆へのご協力、誠にありがとうございました。
参考文献
『組合について』うらそえ織
https://urasoeori.or.jp/cooperative/
『デザインについて』うらそえ織
https://urasoeori.or.jp/design/
『平成24年度沖縄振興特別推進交付金事業(市町村分)検証シート【公表用】 島桑オジー&オバーで観光・産業・街おこしプロジェクト』浦添市
https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/015/247/04urasoeh240408.pdf
『「地域連携」と「高専の繋がり」が生み出す、食品のものづくり』月間高専
https://gekkan-kosen.com/3410/
『それは「もったいない」から始まった! 沖縄在来の「島桑」をお茶やパウダーに 健康・美容でいま注目!!』沖縄タイムス
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/219894